問題

ペリ環状反応に関する次の記述のうち,適切なものはどれか。

③ 共役π系の出発物が電子環状反応により環が生成する場合、出発物と生成物の分子軌道の対称性が同じであれば、ペリ環状反応は穏やかな条件で起こる。

④ 1,3-ブタジエン(4π電子)とマレイン酸ジエチル(2π電子)との間で起こるDiels-Alder環化反応では、立体特異的に trans-2,3-置換シクロヘキセンが生成する。

⑤ 示されたシグマトロピー転移は [1,5] シグマトロピー転移であり、suprafacial な立体化学で進行する。

【引用】公益社団法人日本技術士会「過去問題(第一次試験)」ページ内掲載資料( https://www.engineer.or.jp/c_topics/009/attached/attach_9917_7.pdf、2025年5月9日アクセス)

解答

ペリ環状反応とは、環状の遷移状態を経て電子が協奏的に移動し、結合生成・開裂が同時に起こる反応である。
この反応には以下の3タイプがある:

  • 付加環化反応: 例:Diels-Alder反応
  • 電子環状反応: π電子を含む直鎖分子の環化/開環
  • シグマトロピー転位: σ結合の移動を含むπ電子の再配置

①:(2E,4Z,6E)-オクタトリエンの熱的電子環状反応は6π電子(4n+2系)に該当し、逆旋(スプラ形)によりcis-体を形成する。記述は誤り。
②:光化学的条件では 6π電子系は同旋(アンタラ形)によりtrans-体が生成する。記述は誤り。
③:電子環状反応では、出発物と生成物の分子軌道の対称性が保存される場合、ウッドワード・ホフマン則により、熱的または光化学的に穏やかに進行する。正しい。
④:Diels-Alder反応は立体特異的であり、cis-ジエノフィル(マレイン酸ジエチル)を使えば生成物も cis-置換体となる。記述は誤り。
⑤:構造から判断してこれは [1,7] シグマトロピー転位であり、[1,5] ではない。記述は誤り。

答え