問題

次の記述の,[  ]に入る語句及び数値の組合せとして,最も適切なものはどれか。

1,3-ブタジエンへの HBr の[A]付加反応において、0℃ の反応条件下では 71:29 の比で 1,2- および 1,4- 付加体を与えるが、40℃で反応を行うと生成物の比は 15:85 となる。さらに、0℃で得られた生成物を HBr の存在下に 40℃ に加熱すると、生成物の比は 71:29 から徐々に 15:85 に変化する。

この反応に対する温度の影響は以下のように説明できる。2つの反応生成物の安定性を考えたとき、熱力学的に安定なのは[B]付加体である。まずはじめに低温 (0℃) で反応を行った場合、1,2- および 1,4- 付加体を生成する 2 つの経路が非可逆で平衡に達していないので、生成物の熱力学的安定性は重要ではない。非可逆反応の生成物は[C]のみに依存し、生成物の安定性には依存しない。
そのような反応は[D]といわれる。しかし、高温 (40℃) では 2 つの経路が可逆で平衡に達するため、生成物の分布は安定性にのみ依存し、[C]には依存しない。このような反応は平衡の支配下、または[E]にあるといわれる。

選択肢ABCDE
求電子1,4-反応速度速度支配熱力学支配
求電子1,2-反応速度速度支配熱力学支配
求核1,4-反応物組成熱力学支配速度支配
求電子1,2-反応物組成熱力学支配速度支配
求核1,2-反応速度速度支配熱力学支配

【引用】公益社団法人日本技術士会「過去問題(第一次試験)」ページ内掲載資料( https://www.engineer.or.jp/c_topics/009/attached/attach_9917_7.pdf、2025年5月9日アクセス)

解答

HBr は電子に富んだ二重結合に対して電荷の偏りを生じさせるため、典型的な求電子試薬である。
1,4-付加体はより安定なアルケンを保持するため熱力学的に安定。
低温では速く生成する 1,2-付加体が支配的になる → 速度支配
高温では平衡が成立し、より安定な 1,4-付加体が支配的になる → 熱力学支配

したがって、最も適切な組合せは ① 求電子, 1,4-, 反応速度, 速度支配, 熱力学支配 である。

答え