問題
核磁気共鳴(NMR)に関する次の記述のうち,適切なものはどれか。
① アルキニル水素(−C≡C−H)とビニル型水素(>C=CH−)の1H-NMRスペクトルの化学シフト値(δ)を比較すると、アルキニル水素の方が低磁場側に出現する。
② メチレンシクロヘキサンのヒドロホウ素化−酸化反応の生成物として考えられるシクロヘキシルメタノールと 1-メチルシクロヘキサノールの 2 つの化合物は、1H-NMR スペクトル測定により識別することができる。
③ フッ素19(19F)やリン31(31P)の原子核は核スピンを持たないが,奇数個の陽子を持つ核なので、NMR で検出できる。
④ p-ブロモアセトフェノンは分子中に 8 個の炭素原子を持っているので、13C-NMR スペクトルにおいて 8 本の吸収線を示す。

⑤ エナンチオトピックなプロトンは異なる NMR 吸収を示す。
【引用】公益社団法人日本技術士会「過去問題(第一次試験)」ページ内掲載資料( https://www.engineer.or.jp/c_topics/009/attached/attach_9917_7.pdf、2025年5月9日アクセス)
解答
①:アルキニル水素(≒2.0–3.0 ppm)は、ビニル水素(≒4.5–6.5 ppm)より高磁場側(δ値が小さい)に出現する。誤り。
②:シクロヘキシルメタノールと 1-メチルシクロヘキサノールは構造が異なるため、NMR スペクトル(特にメチル基やメチレン基の位置)に違いがあり、識別可能。正しい。
③:19F や 31P はどちらも核スピン数 = 1/2 を持つ → 「スピンを持たない」という記述は誤り。
④:13C-NMR は化学的に等価な炭素が同じピークを与える。対称性のある芳香族化合物では炭素数よりピーク数が少ない場合もあり、必ず 8 本になるとは限らない。誤り。
⑤:エナンチオトピックなプロトンは、キラル環境下でない限りは 等価 に扱われ、同じ信号を与える。誤り。
答え ②