問題

化石燃料に関する次の記述のうち,不適切なものはどれか。

① 世界の石油確認埋蔵量は,2020年末時点で約1.7兆バレルであった。これを2020年の石油生産量で除した可採年数は,約54年と過去最短の年数となった。

② 近年我が国では,一次エネルギー供給に占める石油の割合は減少傾向にあったが,2011年に発生した東日本大震災とその後の原子力発電所の停止により,一定の期間発電燃料としての石油の需要が増加した。しかしその後,再生可能エネルギーの導入や原子力の再稼働が進んだため,一次エネルギー供給に占める石油の割合は減少し,2020年度は1965年度以降で最低の割合となった。

③ 石油,石炭,天然ガスを合わせた,化石エネルギーの我が国の一次エネルギー供給に占める割合は,2019年は80%を超えていた。この割合は,原子力の比率が高いフランスや再生可能エネルギーの導入を積極的に進めているドイツと比較すると高い水準にある。

④ 近年,シェールガスや炭層メタンガスといった非在来型の天然ガスの開発が進展しており,特にシェールガスは大きな資源量が見込まれている。2015年9月に更新された米国エネルギー情報局の評価調査によると,シェールガスの技術的回収可能資源量は,在来型天然ガスの確認埋蔵量よりも多いと推計された。

⑤ 石炭の有用性として,石油や天然ガスに比べ地域的な偏りが少なく,世界に広く賦存していること。さらに可採年数が100年を超え,石油等の可採年数より長いことが挙げられる。

【引用】公益社団法人日本技術士会「過去問題(第一次試験)」ページ内掲載資料( https://www.engineer.or.jp/c_topics/009/attached/attach_9917_7.pdf、2025年5月9日アクセス)

解答

①:2020年末の世界の石油確認埋蔵量は約1.7兆バレルという点は正しいが、これを同年の生産量で除して得られる可採年数はおよそ50年台後半から60年台とされており、「過去最短」という表現は正確ではない。したがってこの記述は不適切。
②:震災直後に一時的な石油需要の増加があったが、その後の再エネ導入や原発再稼働により、石油依存度は大きく低下したという流れは妥当である。
③:日本の化石燃料依存率(約80%)は、原子力比率の高いフランスや再エネ比率の高いドイツに比べて高水準であることは事実。
④:アメリカでは非在来型天然ガス(特にシェールガス)の生産と技術評価が進んでおり、回収可能資源量が在来型を上回るとされた報告もある。正しい。
⑤:石炭の埋蔵分布は広く、100年以上の可採年数が見込まれていることも報告されており、記述は妥当である。

答え