問題
無機イオン結晶に生成する欠陥の説明あるいは欠陥記号の組合せのうち,最も不適切なものはどれか。
ここで,欠陥記号は Kroger-Vink による表記法を用いるものとし,M は金属を,O は酸素を,V は空孔を表し,有効電荷を表す記号として「・」(正)や「’」(負)を用いている。
① 正孔は電子的な欠陥であり,h’ と表される。
② 有効電荷 +2 の格子間金属 M は,Mi•• と表される。
③ 有効電荷 +1 の酸素空孔は,VO• と表される。
④ 結晶 MO 中に生成する陽イオンのフレンケル欠陥は,Mi• と VM‘ で表される。
⑤ 結晶 MO 中に生成するショットキー欠陥は,VM‘ と VO•• で表される。
【引用】公益社団法人日本技術士会「過去問題(第一次試験)」ページ内掲載資料( https://www.engineer.or.jp/c_topics/010/attached/attach_10606_7.pdf、2025年5月9日アクセス)
解答
①:正孔(ホール)は電子が抜けた状態で、h’と表記される。正しい。
②:格子間に存在する M2+ イオンは、正電荷2個分であり、Mi•• と表すのが正しい。
③:酸素空孔で +1 の電荷を持つならば、表記は VO• だが、実際の酸素空孔は一般に VO••(2価)として表される。+1 という記述が不適切。
④:フレンケル欠陥は、陽イオンが格子位置から格子間へ移動した際に生じ、格子間に Mi•、空いた格子には VM‘ が生成。正しい。
⑤:ショットキー欠陥では、陽イオンと陰イオンの両方の空孔(VM‘、VO••)が同時に生成する。正しい。
したがって、最も不適切なものは③である。
答え ③