問題
カルバニオンを用いた有機反応に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。
① 臭化フェニルマグネシウムのエーテル溶液に乾燥した CO₂ を通し,H₃O⁺ で処理することにより安息香酸が生成する。

② Grignard 試薬にエステルを作用させると第二級アルコールを与えるが,ヒドロキシル基をもつ炭素に結合している置換基のうちの二つは Grignard 試薬に由来する。
③ 異なったカルボニル化合物間のアルドール反応を行う場合,シクロヘキサノンのように α 水素をもたないものと,アセト酢酸エチルのように求核性の高い供与体との反応では,生成物が混合物になることもなく混合アルドール反応が望むように進行する。

④ エチレンオキシドと Grignard 試薬の反応では,出発物のハロゲン化アルキルより 2 炭素多い第一級アルコールに変換できる。
⑤ アセチリドアニオンのアルキル化反応では,第一級ハロゲン化アルキル以外にも使用できる。

【引用】公益社団法人日本技術士会「過去問題(第一次試験)」ページ内掲載資料( https://www.engineer.or.jp/c_topics/009/attached/attach_9917_7.pdf、2025年5月9日アクセス)
解答
①:Grignard 試薬(PhMgBr)に CO₂ を作用させ、酸で処理すれば安息香酸が得られる。正しい。
②:エステルと Grignard 試薬の反応では、2当量付加され、第二級または第三級アルコールが生成し、置換基の2つは Grignard に由来する。正しい。
③:α-水素のないケトン(例:シクロヘキサノン)と高求核性のエノラート(例:アセト酢酸エチル)とのクロスアルドール反応は選択的に進行しやすい。正しい。
④:Grignard 試薬とエチレンオキシドの反応により、元の炭素鎖に 2 つ加えた第一級アルコールが得られる。正しい。
⑤:アセチリドアニオンの SN2 アルキル化反応は第一級ハロゲン化アルキルで効率よく進行するが、第二級や第三級では脱離が競合するため通常は適さない。誤り。
答え ⑤