問題
下記の化学種の酸性・塩基性を比較した次の記述のうち、その強さの順序が誤っているものはどれか。ただし、各項目における性質の強さは「左側ほど強く,右側ほど弱い」ものとする。
① 塩基性の強さ

② 塩基性の強さ

③ 酸性の強さ

④ 酸性の強さ

⑤ 酸性の強さ

【引用】公益社団法人日本技術士会「過去問題(第一次試験)」ページ内掲載資料( https://www.engineer.or.jp/c_topics/009/attached/attach_9917_7.pdf、2025年5月9日アクセス)
解答
①:正しい。
グアニジンは共鳴によって正電荷が分散でき、非常に強い塩基。ジイソプロピルアミンはアルキル基の電子供与性によって塩基性が強く、ピリジンより優れる。ピロールの孤立電子対は芳香族性維持に使われるため、塩基性は最も弱い。
②:正しい。
塩基性は、陰イオンがどれだけプロトンを受け取りやすいかに関係する。電気陰性度が小さい方が、電子対をプロトンと共有しやすいため、CH₃⁻ > NH₂⁻ > OH⁻ > NH₃ の順になる。
③:正しい。
p-ニトロフェノールでは、ニトロ基の強い電子求引性によりフェノキシドイオンが安定化 → 酸性強い。p-メチルフェノールでは、メチル基の電子供与性により酸性が弱くなる。
④:正しい。
電気陰性度の高い置換基がカルボン酸の酸性を強める。F > Cl > Br の順で電子求引効果が強いため、FCH₂COOH が最も酸性が強い。
⑤:誤り。
HF の酸性は中程度(pKa ≈ 3.2)であるが、H₂S(pKa ≈ 7)はより弱酸である。にもかかわらずこの記述では H₂S が H₂O よりも酸性が強いとされており、これは誤り。
なお、H₂S は電気陰性度は低いが、硫黄原子の大きな原子半径により負電荷が分散しやすいため、ある程度の酸性はあるが、HF には劣る。
答え ⑤