問題
セラミックスの機械的性質に関する次の記述のうち,最も不適切なものはどれか。
① 弾性率:弾性体における歪みに対する応力の比。
② 曲げ強さ:曲げモーメントが付加された試験片において,最大引張り応力の作用点周辺を起点として引張り破壊が巨視的に起きたときの最大引張り応力。
③ モース硬さ:正4角錐(対面角136°)のダイヤモンド圧子を試料に押しこんだとき,荷重とくぼみの表面積の比から定義される硬さ。
④ 破壊靭性:材料の不安定亀裂進展開始を規定する応力拡大係数の値。
⑤ ワイブル分布:最弱リンク説に基づく破壊確率分布の一種。ワイブル分布を規定する種々のパラメーターのうち,特に,形状母数 m はワイブル係数とも呼ばれ,測定値のばらつきの程度を表す。
【引用】公益社団法人日本技術士会「過去問題(第一次試験)」ページ内掲載資料( https://www.engineer.or.jp/c_topics/010/attached/attach_10606_7.pdf、2025年5月9日アクセス)
解答
①:弾性率(ヤング率)は「応力 / 歪み」で定義され、弾性体の剛性を表す。正しい。
②:曲げ強さは三点・四点曲げ試験で測定される最大引張り応力であり、引張り破壊の起点として妥当。正しい。
③:記述されている測定方法(ダイヤモンド圧子・くぼみの表面積との比)に該当するのはビッカース硬さであり、モース硬さは10段階の相対的引っかき硬さ尺度である。したがって不適切。
④:破壊靭性は破壊力学における亀裂先端の応力拡大係数(KIC)で表される特性であり、正しい。
⑤:ワイブル分布はセラミックスなどの脆性材料の破壊確率を統計的に記述するものであり、ワイブル係数 m はばらつきの指標。正しい。
したがって、最も不適切なものは③である。
答え ③