問題
t-ブトキシカリウムを触媒としたエチレンオキシドの精密開環重合により,下記のような末端まで構造が明確なポリマーが得られた。この1H-NMRスペクトル解析により,繰返し単位中のメチレンプロトン由来のシグナルと,末端基中のメチルプロトン由来のシグナルとの強度比が 40 : 1 であった。得られたポリマーの数平均重合度に最も近いものはどれか。なお,通常,1H-NMRスペクトルの各シグナルの強度は,それに由来するプロトン数に正比例する。

① 40 ② 90 ③ 120 ④ 160 ⑤ 360
【引用】公益社団法人日本技術士会「過去問題(第一次試験)」ページ内掲載資料(
https://www.engineer.or.jp/c_topics/010/attached/attach_10606_7.pdf、2025年5月9日アクセス)
解答
ポリマーの構造は CH3−O−(CH2CH2O)n−H であり、繰返し単位(CH2CH2O)1つにつきメチレンプロトン(CH2)が 4個存在する。
末端基である t-ブトキシ由来のCH3(メチル基)からは 9個のプロトンが1シグナルとして観測される。
スペクトル上の強度比 40 : 1 は、
繰返し単位全体のメチレン由来プロトンの総数 : メチル基由来プロトンの総数 = 40 : 1 を意味する。
メチレンは1単位あたり 4個なので、
n × 4 = 40 より、n = 10(←これはメチレン数での計算)
しかし、プロトン数比が40 : 1というのは**シグナル積分値**なので、これが**プロトン数の比に等しい**とすると、次のように計算する:
繰返し単位1つにつき 4つのメチレンプロトン ⇒ 重合度 n に対して 4n個のメチレンプロトン
末端のメチル基は 9個のプロトン(t-ブチル基)
⇒ 強度比 = 4n : 9 = 40 : 1
両辺を比較すると: 4n / 9 = 40 → 4n = 360 → n = 90
したがって、正しい数平均重合度(n)は 90 に最も近い値は② 90である。
答え ②