問題

核磁気共鳴(NMR)スペクトルに関する次の記述のうち,最も不適切なものはどれか。

① 一般的なNMRスペクトル測定の内部標準としてテトラメチルシランがよく用いられる。
② フッ素19(19F)やリン31(31P)の原子核は核スピンを持たないが,奇数個の陽子を持つ核なので,NMRスペクトル装置で検出できる。
③ NMRスペクトルの化学シフト値は「観測されたシグナルと標準物質のシグナルとの振動数差(Hz)」を「分光器の振動数(MHz)」で割った値で,単位はppmである。
④ トルエンの1H-NMRスペクトルでは,フェニル基プロトンのシグナルはメチル基プロトンのシグナルより低磁場側に出現する。
⑤ 酢酸メチルの1H-NMRスペクトルでは,メチル基プロトンのシグナルが2本の一重線として観測される。

【引用】公益社団法人日本技術士会「過去問題(第一次試験)」ページ内掲載資料(
https://www.engineer.or.jp/c_topics/010/attached/attach_10606_7.pdf、2025年5月9日アクセス)

解答

①:テトラメチルシラン(TMS)は,NMRスペクトルの基準化合物として広く使われる。正しい。
③:化学シフト(δ値)は [νsample − νTMS] / νspectrometer で定義され,ppmで表される。正しい。
④:トルエン中の芳香環プロトン(フェニル基)は電子密度が低いため,メチル基より低磁場側に出現する。正しい。
⑤:酢酸メチルには2つのメチル基があり,それぞれ異なる環境にあるため,2つの独立したシグナルとして観測される。一重線として出現するのも正しい。正しい。

②:19F(フッ素)や31P(リン)はいずれも核スピンを1/2持っており、NMRで高感度に観測できる。記述中の「核スピンを持たない」は明らかに誤りである。

したがって、最も不適切なものは②である。

答え